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加藤出ウィークリーレポート 

東短 加藤出ウィークリーレポート より

FRB 追加緩和策の検討:準備預金付利停止、MBS・国債購入再開、時間軸強化など

6 月FOMC では、数人のメンバーからデフレを警戒する発言が出ていた。その見方はまだ少数であり、主流にはなっていない(数人のメンバーは、逆に、巨額の財政赤字やFRBの膨張した資産がインフレ予想を押し上げ得ることを指摘していた)。6 月のFOMC メンバーのインフレ率(コアPCE デフレーター)見通しは、4 月より引き下げられたものの、2010 年1.0%、2011 年1.3%、2012 年1.5%(いずれも大勢見通しの中央値)である。
ただし、それらは6 月FOMC で表明された長期的に心地よいインフレ率(大勢見通しで1.7~2.0%)より低い。今後、ダウンサイド・リスクが高まった時の対応策を議論する必要性にFOMC メンバーは言及している。彼らのことなので、必要になったら何らかの追加緩和策をひねり出してくると思われるが、弊害も考慮すると、非常に悩ましいところだと思われる。

金融規制改革法の影響

FRB は今次金融危機下で連邦準備法第13 条3 項(経済危機下の例外的非常時対策)を多発し、本来連邦準備法が認めていない信用緩和策(CP 買入れ、証券会社向け貸出、MMF向け貸出、TALF等々)を大胆に実施した。しかし、それらは米議会から激しく糾弾された。大胆な非伝統的金融政策は、納税者負担を発生させる可能性があるため、事実上、財政政策の領域に入る。議会にほとんど相談なしにそれらが実行されたことに議員らは強く怒ったのである(相談していては時間が間に合わない面があったが)。
今回上院を通過した金融規制改革法は、FRB が第13 条3 項を発動することを今後抑制することになる。FRB が異例の政策を行った場合は、議会の調査機関であるGAO はFRBを監査する。リーマン破綻後のようにFRB が機動的に信用緩和策を行うことは事実上困難になったといえる。

量的緩和効果をFRB が信じていないことを表すSFP ビル

先週金曜日(9 日)の日経新聞「経済教室」への寄稿でも触れたが、FRB は現在の政策を量的緩和策と呼ばれることを嫌がっている。リーマン・ショック後の準備預金の激増は、信用緩和策の副産物であって、それ自体が経済を刺激して需要を増加させるとはバーナンキ議長らFOMC 主流派は考えていない。
そのひとつの証として、米財務省によるSFP ビルの発行がある。FRB は財務省に事実上依頼して、市場の超過準備を吸収する目的で、SFP ビルという短期国債を発行してもらっている。ピーク時(2008 年10~11 月)にはその発行額は5,590 億ドルに達し、その分の準備預金が民間金融機関から米政府のFRB の口座(SFA)に移転されていた。しかし、もしFRB が量的緩和効果を信じているなら、SFP ビルの発行を財務省に依頼しないはずである。現在のその発行残高は、米議会が定める政府債務の上限に抵触しないようにSFPビルは3,000 億ドルに抑制されているが、その制約がなければFRB は同ビルの減額を望まなかっただろう。
ところで、リーマン破綻後にドル短期金利がゼロ%近傍に近づいてから、米財務省による国庫の資金繰りが非常にルーズになっている。財務省が持っているFRB の一般口座の残高は、以前は平均50 億ドルに緻密に維持されていたが、2008 年10 月からこの6 月までの平均573 億ドルに増加している。今年3 月中旬には1,000 億ドル、6 月中旬、6 月末には850 億ドルを上回る残高に一時的に上昇していた。それは市場の準備預金を減少させるが、FRB はマクロ経済に影響はないと判断しているらしく許容している。
そういったFRB の態度を見ていると、FRB はマネタリーベースの量が為替レートに影響を与えるという考え方(いわゆるソロス・チャートなど)も事実上否定しているといえるだろう。
米国の主要紙は、追加緩和策としてのFRB のオプションを具体的に報じているが、それらの効果と問題点を整理してみよう。

超過準備への付利停止(FF 誘導目標ゼロ%)?

現在のフェデラルファンド(FF)市場での取引の大部分は、FRB の準備預金への付利を受けられないGSE が余剰資金を超低利で放出し、それを大手銀行らが引き取ってFRB に預けて利鞘を稼ぐという取引で占められている。FRB が超過準備への付利を現行の0.25%からゼロ%に下げると、大手銀行はそれらの取引を行うインセンティブがなくなる。そうなると、フェデラルファンド取引は更に大幅に縮小し、信用度が高い大手銀行はほとんど同市場から資金を調達しなくなるだろう。
このため、超過準備への付利がゼロ%になると、FF 取引のエフェクティブ金利(加重平均金利)は、信用度が低いほんの一部の市場参加者のビッドに支配されることになる(最近の最高レートは0.375%が多い)。よって、超過準備への付利をゼロにすると、エフェクティブ金利がどうなるか予測しづらい不確実性が現れる。誘導目標をゼロ%にしても、エフェクティブ金利が今より低下するのかよく分からない面がある。ボラティリティも高まるだろう。

付利停止で銀行の行動は変わるか?

バーナンキ議長は12 日に、景気回復と失業率低下のためには、銀行は健全な小規模企業への貸出を増加させる必要があるとの発言を行った。アメリカではグロスの雇用創出の60%を小規模企業が占めているためである(フィナンシャルタイムズ7 月13 日)。
米議会もその問題に強い不満を持っているため、銀行への圧力は今後も続きそうだ。では、FRB が準備預金への付利をやめれば、銀行は貸出を増加させるだろうか?
自己資本比率など様々な経営上の縛りを課せられている現代の銀行は、準備預金への付利が0.25%低下するだけで、その行動を劇的に変える可能性は極めて低いと思われる。
マッキノン・スタンフォード大学教授のように、現在FRB が作り出している低金利環境が銀行の貸出意欲に逆に悪影響を与えていると警告する声も現れている。リスクに見合ったリターンを銀行が得られなくなっているからだという(ウォールストリート・ジャーナル7 月6 日)。
一方、大企業は、先行きの経済の不確実性を懸念しているため設備投資を抑制しており、大規模にキャッシュを抱えて貯蓄率を高めている。その現われとして、FRB 調査の「ファイナンシング・ギャップ」(企業の支出に対する収入の不足)では、米企業は昨年マイナス0.8%(つまり資金余剰)となった。米企業が海外子会社で保持している利益を仮に本国に送金すれば、その数値は更に大きくなる。イギリスや欧州大陸でも大企業には同様の傾向が見られる(英エコノミスト誌7 月3-9 日号)。中央銀行の政策で、大企業の借り入れ需要を拡大させることは難しい環境にある。

MBS の購入再開?

MBS 市場が再び混乱に陥れば、信用緩和策としてFRB がMBS の買入れを復活させる必要性が現れてくる。しかし、現在のように市場が混乱していない場合は、信用緩和策を出動させる大義名分が成り立ちにくい。既にモーゲージ金利は歴史的低水準にある。最近の30 年固定金利は4.5%台だが、これは1971 年以降で最低である(フレディーマック調べ)。それをこれ以上低下させても、住宅需要を刺激する効果は一部にとどまるだろうし、支払い能力が劣る人々にまで住宅を購入させることは当局としては望ましくないだろう。
また、FRB がMBS の購入を再開すると、同証券の残存期間は一般的に数十年と長いため、将来の出口政策が益々困難になっていく恐れもある。
6 月FOMC では、今すぐにではないが、MBS を市場に売却して、FRB のポートフォリオを国債を中心とするものに戻していく方向性について合意が形成されている。よって、現時点ではMBS 購入再開の可能性は低いだろう。

GSE 支援策から抜け出せないFRB

昨年12 月24 日に米財務省は、経営危機のフレディーマック、ファニーメイに対し、青天井で税金を投入する方針を示した。これは事実上の“白地小切手”であり、納税者負担はどこまで膨張するのか、現時点では見えない状況にある。
FRB が購入してきたMBS はフレディーマック、ファニーメイが保証しているものだが、両GSE の経営再建計画は、米金融規制改革法案では触れられず、先送りになった。共和党のMcConnell 上院議員は「手落ちだ」と批判している(WSJ 紙)が、問題が大きすぎて、手が付けられなかったのだと思われる。今後、オバマ政権は両GSE の再建策を練り、議会はそれを来年検討する見通しだが、困難が予想される。米政府としては、波乱が起きないように、当面は膨大な量のMBS をFRB のバランスシートに“塩漬け”にしておきたいところだろう。
7 月14 日時点のFRB のMBS 保有高は1.13 兆ドルである。金融危機前のFRB の平時の総資産は8,000~9,000 億ドルだったが、それよりも巨大だ。中央銀行の資産としては極めて異様であり、一歩間違えばドル危機につながり兼ねないリスクをはらんでいると思われる。FRB が潜在的に抱えているクレジット・リスクを市場がどこかで意識し始める恐れもある。

国債との入れ替えも含むMBS 売却議論

6 月FOMC では数人のメンバー(プロッサー・フィラデルフィア連銀総裁、ウォーシュFRB 理事らか?)が、MBS をFRB の資産から早めに切り離す方がよいと主張している。彼らは、FRB が政府の問題先送りの手段に使われ、適切な金融政策の発動が困難になる弊害を恐れているようだ。ウォーシュ理事は3 月26 日に、「FRB は、究極の救済者になるという誘惑に強く抵抗しなければならない」「FRB は壊れた法律や壊れた金融システムの修理屋ではない」「FRB の行動が、住宅金融の構造調整を進める機動力を低下させるべきではない」と警戒を表している。
6 月FOMC では、MBS の売却は、フェデラルファンド金利を引き上げ始めた後、つまり経済が力強くなってからの方が良いという声が大勢を占めた。数人の委員は、FRB が保有するMBS を同期間の国債と入れ替えていけば、金融市場に引き締め効果をもたらさずに済むと提案した。他の委員もそれに賛意を示した。
とはいえ、MBS の売却を始める際は、市場と事前に入念にコミュニケーションをとってから、慎重に行うことをFOMC は合意している。そういった文章を議事要旨に入れておかないと、市場が不安定化する恐れがあると見ているのだろう。“腫れ物”をさわるかのような議論がFOMC でなされている。

ジリオン(1000 兆)ドル紙幣

余談だが、数ヶ月前にニューヨークの金融市場関係者から「1000 兆米ドル札」をもらった。土産物屋で売っているおもちゃのフェイク紙幣である。1000 兆という単位をこの紙幣は“ジリオン(Zillion)”と呼んでいる。
紙幣の右手上に、「国立救済銀行の発行によるFederal No Reserve Note(連邦準備なし紙幣)」と印字されているのが笑える。紙幣の左右の下には、「ファニーメイのミセス大失敗」「フレディーマックのミスター大失敗」と印刷されてある。このジリオン紙幣は、両GSE への税金投入が米国の財政に大きな負担をかけ得ることをブラック・ジョークを交えて皮肉っている。
紙幣には次のような解説が記されている。「根拠なく熱狂した議会が国民に押し付けた巨額の債務を(ハイパーインフレによって)取り除くため、政府はジリオン札を発行することになった。ジリオン札が大量出血を抑えられない場合、オバマ政権は、ガジリオン札(1000 兆ドルの千倍?)の発行を真剣に検討している」。

MBS 市場にFRB がもたらした歪み:フェイルの激増

FRB がこの春まで市場から大規模にMBS を買い取ったことで、同市場に歪みも現れている。MBS の受け渡しにフェイルが激しく発生している。FRB が3 月に買取りを停止して3か月以上経過したのに、未だにFRB が証券会社から受け取れないMBS がある(FRB が購入を約定したMBS は1.25 兆ドルだが、FRB の保有高はそれに達していない)。
6月FOMC 議事要旨によると、発行量が小さい(90 億ドル)クーポン5.5%のファニーメイ発行のMBS などでフェイルが深刻化している。FOMC は、解決策として、FRB が「クーポン・スワップ」(FRB が購入を約定したがまだ受け取れていない銘柄と、市場で流動性がある銘柄を交換する取引)を行うことを承認した。MBS 市場にそこまで歪みをもたらしているため、今後MBS をFRB が追加的に購入できる規模は実際限られるだろう。

国債の購入再開?

FRB は昨年10 月に国債の購入を停止した。国債の利回りに対する効果が不明瞭であったことや、海外の投資家にマネタイゼーション(財政赤字の貨幣化)と見られるリスクを恐れたためだと思われる。効果は怪しくとも景気対策として国債の購入をFRB が再開する場合は、米国債は海外投資家の保有比率が高いだけに、中国などが不信感を抱かないように配慮する必要がある。
なお、6 月FOMC では、FRB が現時点で保有している国債の償還時の扱いが議論された。
平常時のオペレーションでは、市場から購入した国債は、償還が来ると基本的には乗り換えが行われていた。FRB のスタッフが今回提示した案は次の2 案だった。①償還が来た国債は乗り換えず、保有国債残高を減少させる。それに伴ってFRB の資産規模および準備預金は縮小する。②償還が来た国債の額だけ、T ビル(短期国債)または残存期間3年以内のクーポン債を購入する。この場合、FRB の資産規模および準備預金は縮小しないが、FRB のポートフォリオのデュレーションは短くなる。
この提案に対して、FOMC メンバーは今回結論を下さなかった。もしかすると今後必要になるかもしれない追加緩和策(国債購入再開もそのひとつだろう)との整合性の観点から、6 月時点では決めずに先送りする方がよいと考えたのではないかと思われる。

時間軸の強化?

FRB が昨年から今年春先にかけて出口政策の具体的手段について盛んに言及していたのは、バランスシートが異様に膨張していてもFRB は金融引き締めを開始できる能力を持っていることを市場に示して、市場のインフレ予想が妙に高まることを防ぐことを意図していたのだと思われる。しかし、FRB のバランスシートが膨張していてもインフレ率は低下することを米国の市場参加者が実体験し、彼らのインフレ予想が低下してくると、FRB が出口政策をデモンストレーションする必要性はなくなることになる。
6 月FOMC 議事要旨も影響して、FRB の出口政策はかなり先という見方が市場では主流になっている。超低水準の短期金利が今後も継続されるという予想が中長期金利を押し下げる時間軸効果は、既に強く発揮されている。一般的には、文言を変えて時間軸効果をさらに強調する必要性はあまりないように思われる。
もしそれをFRB があえて行って、イールドカーブを更に押し下げる戦略(およびそれに付随するドル安を狙う戦略)を採る場合、銀行の収益に悪影響を与えて、クレジット・クランチからの脱却が遅れる恐れが出てくると思われる。また、今年のBIS 年次報告書が警告していたような、投資家がイールドを求めて世界中でリスク資産への投資を強める動きがより顕著になり、次の危機の火種になり得る金融不均衡が累積されていくリスクもあると思われる。

ウォーシュFRB 理事の率直な危機意識

このように、既に異例の領域にいるFRB が追加緩和策を検討する場合、利益と弊害を比較考慮しなければならず、結論を出すのは容易ではない。
ウォーシュFRB 理事は、6 月28 日に追加緩和策に関して次のように述べた。「異例の資産保有(MBS、エージェンシー債、国債など)がマクロ経済へ与えた効果は、あまり大きくなく、金融市場のコンディションに与えた影響もあまりはっきししない」「財政政策が政治的、経済的な制限にぶつかる場合、FRB は資産を拡大するなど、もっと政策を行うべきだと信じている人がいる。私の見解では、FRB が資産を拡大する場合は、それは厳密に精査される必要がある」「私は、(FRB の資産拡大による)市場機能の劣化、政府債務の貨幣化という見方、民間の資産購入者の締め出し、中央銀行の信認低下というコストを、マクロ経済にとっての利益の増加が上回ることに、確信を得たいのである」。
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