FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

需要不足が緊縮財政に投げかける疑問 FT

需要不足が緊縮財政に投げかける疑問2010.07.08 
Financial Times(2010年7月7日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)


 国債のデフォルト(債務不履行)はもう目の前だ。手遅れになる前に悔い改め、節約に励まなければならない――。世間にはそんな不吉な言説が流布している。


 しかし、筆者は1つ疑問を感じている。我々は、市場には適正な価格をつける能力などないと思っているのだろうか? 先進国の公債という世界で最も理解され、かつ最も流動性の高い資産であっても、ちゃんとした価格はつけられないと考えているのだろうか?


 そんなことはあるまい。それどころか、市場は今、重要なことを物語っている。


 7月5日の10年物国債の流通利回りは、日本が1.1%でドイツが2.6%、米国が3%で英国が3.3%だった。物価連動国債の利回りを基に計算すると、これら先進国の政府の実質借入金利は非常に低いことが分かる(米国、ドイツ、英国では1.2%以下)。


 つまり投資家は、デフォルトとインフレに襲われるリスクよりも、恐慌とデフレに陥るリスクの方が大きいという見解を示しているのである。


◆主要国の国債利回りが物語るもの


 中央銀行が国債の買い入れを中止したのに、政府が多額の財政赤字をこれほど簡単に借り入れで手当てできるのは、一体なぜなのだろうか?


 経済協力開発機構(OECD)による最新の「経済見通し」に収められた財政収支や経常収支の数字を使ってちょっと計算してみよう。


先進国の民間セクター(家計と企業)では今年、収入が支出を上回る見通しで、その差はGDP(国内総生産)の7%に相当するという。丸めた金額にして、ざっと3兆ドルだ。


 計算で得られる民間セクターの貯蓄超過の内訳は、米国とユーロ圏がそれぞれ約1兆ドルで、日本が約5000億ドル、英国が2000億ドルとなる。


 注目したいのはこの3兆ドルである。なぜならこれは、先進国の民間セクターが2010年に自国の政府や外国人に新たに貸し付けると予想される金額(純額)にほかならないからだ。民間セクターは大変な節約をしていることになる。特に企業はかなりの倹約に励んでいると言える。

◆巨額の民間資金が新興国に向かうが・・・


 この資金はどこに向かうのだろうか? まず、新興国に流れることが考えられる。例えば、先進国では財政赤字が削減されてゼロになるが、民間セクターの貯蓄超過は維持されると想像してみよう。この場合、先進国全体では3兆ドル(GDPの7%相当額)の経常収支黒字が生じることになる。OECD全体が巨大なドイツのごとき存在になり、裕福な国々は貧しい国々に資本を流し込むことになるわけだ。


 しかし、現実にはそうならないだろう。先進国が全体として3兆ドルの経常黒字を出せば、新興国は全体として3兆ドルの経常赤字を出すことになるが、実際のところ新興国は経常黒字を出すと予想されているからだ。


 米ワシントンを本拠地とする国際金融協会(IIF)の最新の予測によれば、新興国の経常黒字は合計で約3000億ドルに達し、その3分の2を中国の黒字が占める見通しだという。この合計額は2年前の実績より少ないが、純額ベースで見れば新興国が先進国に資本を供給している(先進国が新興国に、ではない)という構図に変わりはない。


 それだけではない。IIFによれば、先進国から新興国への民間資金の流れは今年、純額ベースで7000億ドル近くに達するという。ところが、この流れは新興国からの資本流出によってほぼ相殺される。外貨準備の増加という公的なチャネルでの資本流出が6000億ドル近くに上ると見られるのだ。


 このような巨額の公的介入が行われれば、新興国への多額の資本の純流入は実現しない。それどころか、先進国の民間セクターが新興国の民間セクターに対する債権を積み上げる一方、新興国の政府はそれを打ち消すかのように先進国の政府に対する債権を積み上げるという構図になるのである。


◆結局は最もリスクが小さい先進国の政府債務に流れ込む


 要するに、今のところは、先進国の政府債務に巨額の資金が純流入する構図が存在している。もちろん中には、厳しい状況に陥る恐れのある国もある。しかし、ギリシャやスペインが困難に直面しているのだから、今後は米国も、いや英国ですら困難な状況に陥るなどという議論は大間違いである。


 むしろその正反対の状況、つまりリスクからの逃避がリスクの比較的小さな資産への資金流入につながるという状況になる可能性の方がはるかに高い。民間セクターの莫大な貯蓄超過の受け皿として最も危険性が小さな資産と言えば、これはもう、大きな先進国の公的債務を置いてほかにない。


 ただ、こうした資金の流れを見て分かるのはその出所だけである。では、その因果関係はどうなのだろうか? 金融危機の勃発を受けて民間セクターの支出が急減したのは、将来発生する財政赤字を人々が恐れたからだろうか? そんなはずはない。資本市場で「クラウディングアウト(締め出し)」が生じている徴候もほとんど見られない。


 最も合理的で的を射ている可能性が高いのは恐らく、危機に見舞われた民間セクターで支出の意欲が急激に衰えたことに対応して財政赤字が生じたという仮説だろう。政府は財政をもっと引き締めることもできた。だが、もしそうしていたら、経済は恐慌に陥っていたはずだ。


◆緊縮財政を受けて民間セクターの支出は増えるのか?


 では、今後は一体どうなるのだろうか? とりあえず、新興国は政策を大きく転換しないと仮定しよう。この場合、先進国の政府が歳出を抑制しても景気は減速せず、いわゆる二番底にも陥らないというのであれば、民間セクターの支出が大幅に増加しなければならない。


 こうした見通しの背景にある議論は、財政の長期的な持続可能性に対する人々の信頼感が高まれば、目先、金利や為替レートに大きな影響が及ばなくても、すぐに個人消費や企業の設備投資の増加につながるというものに違いない。筆者はこの主張にかなり懐疑的だ。


 だが、一歩譲ってこれも正しいと仮定しよう。すると、医療・介護や年金といった年齢に関係するプログラムへの支出が長期的に増加するのを抑制することが、ベストな政策として浮かび上がってくる。国際決済銀行(BIS)が先日発表した素晴らしい年次報告書に収められた長期の財政トレンドに関する議論は、この点を明解に示してくれている。


 だが、財政を短期間で急激に引き締めるべきだという主張は説得力に乏しい。確かに、景気は回復しつつある。しかし、経済活動はかつてのピークに比べればまだかなり弱い。信頼できそうな長期トレンドの推計と比較しても、トレンドが示すレベルを下回ってしまうケースがほとんどだ。


 失業率の上昇幅がどの先進国よりも圧倒的に大きい米国については、特にそうだと言える。米国が欧州大陸に突然変身したのであればともかく、そうでなければ、均衡失業率がこれほど急騰したのは一体なぜなのか?


◆深刻な需要不足に苦しめられる先進国、金融政策頼みには限界


 先進国は引き続き深刻な需要不足に陥っているというのが、筆者の結論である。


 このような環境で財政支出の急激な削減が理にかなった政策になるとすれば、それは金融政策が単独で効く可能性があり、かつ金利変動に敏感に反応するセクターや業界を成長させることが経済的苦境から脱出する最善の策である場合に限られるだろう。どちらの条件にも疑うべき理由がある。


 カナダで先日開催された20カ国・地域(G20)のサミットで、各国首脳は「財政赤字を2013年までに半減し、対GDP政府債務比率を2016年までに引き下げるか安定させる」と約束した。しかしそれよりも、政府支出の長期的な軌道を変えることに注力する方が、はるかに理にかなっているだろう。


 首脳たちは、政府の倹約が民間セクターの支出を促すと期待しているのかもしれない。だが、もしその期待が裏切られたら、彼らは一体どうするつもりなのだろうか?
スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

やまとひこ

Author:やまとひこ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。