FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

トヨタ

自動車メーカーが過剰在庫にあわて、生産を極度に絞ることで起こることは、誰の目にも明らかだ。サプライヤー、さらにその下請けと、製造業のハシゴの下方(ものを生み出すプロセスでは「上流」)にいくほど、突然の生産調整、それも「いつまでになるかも分からない」ような生産停止への対処は難しくなる。特に今の日本の製造業の仕組みの中では。それは、こういうことだ。

製品の最終組み立てを行う自動車メーカーは、ものの何日かのリードタイムで各日の製造予定と部品発注を確定させ、それぞれの製品が組立ラインを「流れる」タイミングに合わせて、部品がライン脇に着いていることを要求する。トヨタの場合、この製造予定と部品発注の確定は、実に「1日半前」だという。
  それに対して、部品を作り、納入する側は、これだけの短い時間の中で素材から生産段取りまでを用意できるわけではない。1日半といえば、発注を受けて即、製造に取りかかり、輸送して要求されている現場に着くだけでもぎりぎりだ。しかも、前にも書いたように、自然災害や交通事情などによる生産や輸送の遅れについても、責任は納入側に預けられている。
 となれば、どこかにバッファー(緩衝帯)を設けなければならない。サプライヤー側が、半年、あるいは1年を通した計画として製品メーカーが提示した大筋の数量に、独自の予測を加味して、何があっても間に合わせるだけの「在庫」を持つことで対応しているのである。



 さらにその前段階で、細かな部品類を作る小企業ともなれば、製品メーカーから部品メーカーへと伝わってきた確定発注を待って、素材や段取りを準備したのではまったく間に合わない。
 例えばちょっとした鋼板の板金部品1つを、1日に何千個と作る小さな工場があったとしよう。彼らも彼らなりに在庫を持ったり、発注量によっては早朝から働き詰めで予定数が仕上がるまで残業する、といった日々を送る。
  しかし、その素材、かなりの量の鋼板は、即日手に入るわけではない。むしろ零細だからこそ、何カ月も前からおよその分量を予約して、手形や現金での日々の支払いを滞らせないようにする以外にない。
 ということは、製品メーカーが半年前に予告していた生産計画を突然変更し、工場を止めるまでの減産に入れば、3次、4次・・・と連なる零細な「下請け」企業はその場で資金繰りが行き詰まる可能性に直面する。もちろん1次、2次のサプライヤーだって楽ではない。(中略)

世界バブル崩壊の中で、トヨタは自分たちの在庫を減らし、急減速した需要に対応した生産量に落ち着かせるべく、工場の稼働停止を含む強烈な生産調整に走った。それだけである。他の自動車メーカーも同じだったが、製造業の上流側に対しては「緊急事態なので、皆さん、それぞれに何とかしてください」に終始した。
 しかし、トヨタは、最低でもそれまで数年にわたって巨額の利益を上げ続けてきていた。少なく見積もっても10兆円は手元に残せているはず。ならば、それを背景に、特にサプライチェーンの末端に至る中小企業の資金繰りに協力することができたはず。例えばトヨタが低金利融資の保証をする程度のことからでも手をつけ、関係企業の相談を受けるだけでも、末端に至る企業や労働者の混乱はずいぶん小さくなったはずなのだ。かつてのトヨタならば、こういう事態に備えていたはずだった。しかしトヨタの経営陣は、自社を守ることに走っただけだった。(中略)


その実態は、決算資料をざっと見渡すだけでも垣間見えてくる。
2007(平成19)年3月期の決算では純利益が1兆6440億円。その背後では、投資系の資産が7兆354億円、有形固定資産として8兆600億円となっていた。2008年3月期決算になると、純利益が1兆7179億円に対して、投資系の資産はほぼ6兆6000億円、有形固定資産は7兆8000億円ほど。
 ところがリーマン・ショックを挟んだ2009年3月期決算では、純利益は4369億円の赤字に落ち込んだ。これは大きく報道されている。それよりも注目すべきは、投資系資産の損失額が1兆8800億円に達し、有形固定資産も4100億円マイナス、資産全体の損失はおよそ3兆4000億円、総資産の1割を失っていることだ。

これは、決算報告要旨に記載されている大まかな、そして対外的に公開している数値にすぎないわけで、トヨタの「金庫」の中身がさらに厳しい状況に陥ったことは容易に想像できる。別の見方をすれば、トヨタはバブルの中で手にした巨額の利益の多く、2008年時点で言えば総資産の4分の1かそれ以上を、バブルそのものであった投資市場に注ぎ込んでいた、と見ていい。それが一瞬にして「溶ける」状況に直面したのだから、2008年秋のあの時期に、経営陣がパニックのような反応を見せたことは分からなくもない。(中略)

それにしても、ここに記した数字は、ホームページなどでも公開されている決算報告要旨から抜粋したものであり、誰でも閲覧できる。それにもかかわらずメディアは、そしてアナリストなども、この資産の喪失にはほとんど言及していない。このご時世、投機に資金を注ぎ 込み、バブルが弾けてそれが「溶けて」消えるのは珍しくもない、ということか。
 しかし、ほんの一世代前までのトヨタの企業像が頭に残る人間としては、投資で資産を膨らまそうとすること、自分たちの製造活動を支える根にまでの目配りが薄れたこと、そしていざという時に腰が据わらないこと・・・。もはや「かつての」トヨタではなくなった、と思ってしまうのである。(後略)

【4/30 JBpressより】

スポンサーサイト

コメント

非公開コメント

プロフィール

やまとひこ

Author:やまとひこ
FC2ブログへようこそ!

最新記事
最新コメント
最新トラックバック
月別アーカイブ
カテゴリ
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。