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CDS

― CDSは相対の取引であるために、GSE2社を参照するCDSの残高を推計するのは難しい。2007年末の統計で、CDS市場全体の残高は62兆ドル程度とされる。このうち約半分がインデックスで、残りがシングルネーム取引とされる。今年に入っても取引量は増加しているが、一方でTriOptima社は今年に入って8月までに市場に存在する22兆ドル(!)のインデックス取引を相殺・解約したとしている。インデックス取引のうちGSE2社が含まれるのは北米のCDX IGだけで、このインデックスに占める構成比率も125分の2であることを考えると、インデックスの構成銘柄としてのGSE2社の残高は決して大きなものはない。シングルネームでの取引の残高を推計するのはより難しいが、合計で1兆ドルという数字を鵜呑みにするのは抵抗がある。また、こちらの方がより重要なポイントであるが、ここで議論している数字はグロスの数字であり、予想損失額を計算する際にはプロテクションの売り買いをネットした数字を使うべきである。簡単に言えば、今日1億ドルプロテクションを買って、明日1億ドル売れば、市場統計の数字は2億ドルの残高となるが、実際のリスク量はゼロということである。ISDAのプロトコルは、ネットでの決済をスムーズに行なう機能も持つ。さらには、CDSはいわばゼロサムの世界であり、誰かが損をすればどこかで同じだけ得をしている人がいるわけであり、もちろん個別では大きな損失を計上する参加者が出てくることもありうるが、システム全体での損得は理論上はゼロということになる。

潜在的なリスクについて警鐘を鳴らすことは非常に重要ではあるが、この書きぶりは大げさである印象が否めない。もちろん、極端に価格の低いCheapestなどがどこかに存在していたりしたら、話はややこしくなる。当面は、Cheapestの価格がどの程度のものなのか、Auctionではどの債券がDeliverable Obligationに選ばれる(あるいは選ばれない)のかが注目される。まだまだ注意は必要である。

おそらく空前絶後と思われるが、(直前・直後の)格付けがAAA、(直前の)CDSスプレッドが38bps程度の企業にCDSのクレジットイベントが発生する展開になったようだ。

日曜日に米当局はFannie MaeとFreddie MacをFHFAのもとでconservatoryship(公的管理下)におくと宣言、当局が株式を購入すると同時に経営権も掌握することとなった。7月17日のエントリーでも書いたが、単に国が株を買うだけならおそらく問題ないが、経営権を掌握する形をとると、CDSのBankruptcyイベントに抵触するおそれがある(seeks or become subject to the appointment of an administrator, provisional liquidator, convervator….)。用語定義上はBankruptcyと判断するのが妥当と考えられるが、長銀の国有化の時と同様に、実質的に債務の履行能力は国のサポートによって高まることから、市場の混乱を避けるためにも、クレジットイベントを認定させないという市場参加者等の判断もあるかと思われた。

この日のISDAの発表によると、主要なディーラー13行は一致して今回の救済措置はクレジットイベントに該当するとの見解を示し、それに基づいて現物決済を入札によって決まる価格に基づく現金決済に変更するProtocolが用意される運びとなった。Protocolへの参加はあくまでも任意であり、クレジットイベントを認定するしないも当事者の任意であることから、世の中のすべてのCDSがイベントとなるかは定かではないが、今の流れからするとCDXインデックスを中心に相当程度のCDSにおいてイベントが認定されることが予想される。

イベントが認定されると、現金決済においても現物決済においても、例えばFannie Maeのシニアを参照するCDSであればFannie Maeの債務(おそらくFannie Maeが保証するMBSも含む)のうち、プロテクションの買い手は引渡可能債務の条件を満たすものの中で最も価格が低いもの(cheapest)を決済に使おうする。今回の場合は、国のサポートが期待できることからシニア債はcheapestでも100%近辺、劣後債でもそこそこのリカバリーは期待できるのではないかと直感的には考えられる。長期の固定債は金利が原因で比較的大きくアンダーパーとなることはあるかもしれない。昨今の金利低下状況を見れば可能性は高くはなさそうだが。ゼロクーポン債も、たとえば現時点では3億ドルまで元本が逓増していて、償還時に10億ドルとなるものであれば、イベント決済時にはあくまでも3億ドルとしてしか扱われないことから、現物決済ではおそらく問題とはならず、Auctionでは必要があれば何らかの文言上の手当てが行なわれるのかもしれない。

極端な結果になりうるのは、シンセティックCDOなどで使われることのある“固定回収率”という仕組みで、クレジットイベントが発生した場合の回収率/損失率を予め決めておくものであり、例えば取引当初に30%の回収率と決めておけば、実際のリカバリーにかかわらず70%の損失が発生することになる。また、First to Defaultのような仕組みでは、GSE以外の参照銘柄のスプレッド拡大で時価が大幅に低下している時に、GSEのイベントによって100%近辺で早期償還となるものもあるだろう。

一般的なCDSではクレジットイベント通知はプロテクションの買い手も売り手も双方が行なうことが可能であるが、シンセティックCDOやFTDのような商品においては多くの場合はクレジットイベントを通知・宣言できるのは仕組みを組成したアレンジャー側のみであることから、案件によってはクレジットイベントが認定されないか、されるにしてもタイミングが世間一般とずれてくる可能性は残る。

クレジットイベント決済にともなう事務負担は少なくなく、案件によってはやや違和感が残るような結果となるケースもあるだろうが、おそらく金融システムが大混乱を起こすようなことにはならないのだろう。「Fannie MaeにBankruptcyが認定された」というヘッドラインは、当局にとっては決して面白いものではないと思われるが、、。

むしろ懸念すべきは、GSE2社がカウンターパーティーであるスワップ契約(金利・通貨スワップ・スワップション)において、これを支配するマスター契約上でEvent of Defaultに該当して、既存のスワップ契約がすべて時価で清算され、ディーラーによるポジションのカバーでマーケットが混乱するといったシナリオであったが、これについても、7月にGSE法案が成立した際に、GSEがconservatorshipとなっただけではマスター契約におけるEvent of Defaultを宣言することはできないとの条項が作られたようで、これによってGSE2社が取り組むスワップ契約が早期終了となることはないようだ。なんとも用意周到である。

とりあえず、GSEイベント決済Protocolが受け入れられて、これに則って粛々とイベント決済が行なわれるのかを見守りたい。

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